poetarot(皇帝のカード)保存版

とつぜん、あなたは。夜を包囲する。たえまなく、制度から。したたりおちる、血の記憶。たかが言葉に。洗脳された、わたしは。あろうことか。他人のために。愚者となって、月の街路を逃走する。



疲れている。電車の通路に、石の山羊を放牧して。王よ、あなたが。眠っている。ときどき、満足そうな笑みを、浮かべるのは。外宇宙征服の、夢を見ているから。その隣で、たまたま。詩人、実は。使命を忘れた、隠者が。象徴の球体を、電子書籍で。読み解いている。



ヒーローも、個々人の。生活は救えない。ぜったい権力も、無効である。なぜなら、少なくとも。少年少女は、暗殺者だから。ひとびとは、判断停止で。煉瓦の道を、踏みはずさないように。幸福な、大団円を。めざすのだ、が。想像力で。かたく結ばれている、まず最初の者が。標的である。



さて。詩でもかくか。お手軽に。お気楽に。てきとーに。と。わたしが思っても。言葉が、勝手に。シリアスに、呻きはじめる。ような、気がして。デタラメに、空を切っても。血が。噴き出る。みたいな。無の棟梁よ。いまこそ、勅令を発せよ。風の民に、絶対言語で。



返却日の、過ぎた本に。ウナガサレテ。とぼとぼ、超高層の塔に。向かってあるく。道は、いつだって。未知であり、迂回しても。たどりつけたら、罠。に、落ちて。恋をしろ。墳墓の、迷宮で。つかのまの。夏の光さえ、浴びずに。死者たちの、書物を学ぶ。あなた。



わたしは、また。もどってきた。不毛の、しかし。明日があるなら、ここからしか。はじまらない、権力の荒野に。両の手を、燦然と組み上げて。祈りのはげしさに、いったんは。昏倒する。



ゆきずりの少女よ。あなたの、素足にさわりたい。木漏れ日のした、清流で。血ぬられた家系を洗う、わたしは。すべてを、所有していながら。生まれついて、自由をもたぬ。



おまえは、子どもの。姿で。誘惑する、世界の戦略を。シャッフルして、運命を分配する。朝の食卓に。現在の自分を疑わない、ハムエッグの抒情にこそ。光の制裁を。



劇団のロッカールームのようなところで私服に着替えている。ネクタイがなかなか結べない。長すぎたり、太すぎたり、破れていたり、どこから出すのか次つぎ別のネクタイで試してみるが結べない。そういう場面で目が覚めた。おはよう。苦渋の朝だ。



そして。世紀のおわりに、死ぬほど。身もだえして。うねりながら、その。最後の境界に、向かった。水辺に。集落を組織して、砂漠は。わたしに、絶対の。称号を与えた。



炎上しているのに、だれも。気がつかない、うつむいて。帰途を急ぐ。携帯電話を、耳に。貼りつけるのが、流行らしい。燃えているのは、都市の輪郭である。正しい意味で。村落の抒情は、滅びた。あなたは今日も、懸崖の上に立つ。



版図を広げ、凱旋する。世界のはてから。というのは、嘘。生まれたところが、世界のはてだった。そこから、四方八方。果てはどこまで行っても。はてしなく、わたしはいつも。傷ついて帰還する、襤褸の王なのだ。



やがて。星が流れ、いくつもの。夜が過ぎた、わたしに。つらなる先祖の、数よりも多くの。窓の外には、まだ。すべてがあるというのに。その家からは、だれも出てこない。



雨の日。無聊に、過ぎる時間も。ただ消えてしまう、のではない。ふり積もる。そして。どこか深い、ふかい海の。底の。かけがえのない、傷口で。ぶあつい書物のように。綴じられる。



また今日も。だれかが立ち去る。死ぬ。風のなかにながくのびる樹木の影。切り取られた空の遠景に。十字架と銅鐘。わたしもささやかな。22枚の記憶をシャッフルして。あと何年かループして終わるのだろう。



刺客がきたら、捕らえず殺さず。応接間に。殺意は清らかで、ただひとつ。この世で。わたしの命と、釣り合うもの。ゆめゆめ、抗うな。門番よ、くれぐれも。死がきたら、フリーパスで。



正午、雑踏のなか。ふいに、めざめる。苦い。輪郭をもとめて。ビルディングと、ビルディングとビルディング。の坩堝を歩く。とつぜん、薔薇のめまいに襲われて。わたしは、わたしの。秘密の名前を。暗殺者に告げる。



雷雨に冷やされて、束の間。世界の、全景が倒立する。コロシアムでは、善とも悪ともつかぬものたちが。たがいの足を、ひっぱりあっている。似たもの同士なのに。日曜日がきても。私は、あいかわらず。逆さまに吊られている。



謁見の間で。異邦から帰還した、老詩人に会った。旅の歳月に、はぐくまれた。ゆたかな、あごひげ。膝までとどく。そこから。土産の豆鉄砲をだすと、いきなり。玉座の上の、鳩時計を撃った。「この国の時間は狂っております」と言った。



迷路は。たくさんの、つきあたりをもつ。出口はひとつ。ではなく、ふたつ。だって、入口からも出られるから。と。ジプシーの女のつぶやき。は。つきあかりの下でみる、せせらぎのように。きよらかな、慰安にみちていた。



やり残したことは、可能性の全部。ひとはみんな途中で終わる。残念だ、世界を。征服できなかった。わたしに、少量の狂気があれば。他人を不幸に、できるだけのカネがあれば。権力と棍棒があれば。生まれかわることが、できさえすれば。



ひとりで、さみしい人は。誰といても、さみしい。永遠に。いまわのきわに、宮廷料理人を召喚し、カレーライスを作ってもらった。いちど食べてみたかった大衆の味。最期に、シェフは。星のかたちにカットした、人参を。わたしの額に、ぴた。と貼りつけてくれた。































名前
URL
削除用パスワード
by puffin99rice | 2013-08-20 22:23 | タロット詩 | Trackback | Comments(0)

ホームページ「みつべえ」(1999〜2004年)の後継として2004年12月に開設。2019年11月から詩と写真のコラボも開始。


by みつべえ