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poetarot(法王のカード)保存版

もうじき。あなたより。十年、トシ上になる。おれのほうが、大先輩だぜ。あ。ずいぶん若くして。死んだのだな。ふるさとの、丘のうえの。砂の吹きだまりに、消えた父よ。肉体がないから、いつまでも。そばにいてくれる。



死者は生者より。多くを語る。沈黙こそ言葉。雷撃のように。いのちを、おびやかす。黄金の夜明けに、動かなくなった。あなたの、額に置いた。わたしの手の、すごい熱量。わたしが。生きている、わたしを。あからさまに。知った瞬間だった。 



星と蝶と。母と。海と森の。闇の、ふかさを。教えてくれた。最初の言葉と、たべものを。与えてくれた。すりこまれた愛より、つよいものを。わたしは、いまだに。知らない。しかし。それは愛なのか。あなたの遺品は、錆びた薬莢。だけだった。



凱旋門を迂回した。もう、わたしの。時間の残量は少ない。棒の女王に。いきなり、ひっぱかれた。思いあたること多すぎて。抗弁できずに。夜の運河に、放尿しながら。決意した。明日の朝、いちばんで。旅に出ようと。



表面を。うすく、はがすと。地図が、あらわれ。もういちまい、めくると。石の言葉で、物語が。はじまる。あなたは、晩年。古ぼけた、マホガニーの机で。むかし収集した、頁岩ばかり。読んでいた。祖父や曽祖父と、同じように。背をまるめて。



安寧を、もとめるのなら。おおいなる。ふところに、入れ。もう、何も考えなくともよい。きみたちのかわりに。悩み、傷つき。死さえも経験し。すべての、設問に答えるから。迷えるものらよ、いますぐ。わたしへ。絶望と自己愛を捨てに来い。



ところで、幸福とは何か。ひとことで済ませると、それは自己充足である。既成の、どんな崇高な「幸福論」も「人生論」も「処世術」も、しょせん他人の生きた廃墟である。実存が本質に転倒するカラクリ。



戸外では、いつも。石が降っている。目に見えない、こまかい。大量に。ひとびとは、われ知らず。頭蓋を、打ち砕かれて。死んでいるのに。気がつかず、平均寿命を。まっとうする。ハレルヤ。



北風、そのとき。樹木は、いっせいに。衣服をぬぎすて、すっ、ぱだかで。冬に、真向かう。試されているのは。あなたという名の、わたしであり。あなたたち、と。呼ばれる、わたしたちである。



絵画や音楽。と同じように、詩の言語は。多分に象徴的だ。たとえば読者としての私。は。詩にモラルや処世訓を、期待している。わけではない。というか、その詩の言葉の意味に感動する。のではない。詩は散文ではないのだ。そのことを、本当に。分かっている。人は少ない。



もっと、シンプルに。信者を管理したい。死にゆく者らには、祝福を。巨大な組織こそ、愛である。問うことは、資源の無駄だから。秘密の保持は、まかせておけ。悪いようにはしないぜ、わたしは。きみたちに、選ばれたのだからね。絶対多数で。



青空。鳥のように、擦過する。傷のある、額を。思い出は、寄り添う。石に。誰も、触れるな。わたしだけが。知っているから。ささやかな、しかし。かけがえのない、秘密で。むすばれた、かなしみが。あふれる無言に。花を、供えて。立ち去る。



苦しみや悲しみがつづく時間は途方もなく長く感じるが、ある意味、人生をもっともよく味わっている、ということになろう。それは、宗教の救済マニュアルに。似ている。



冬の軟骨を、軋ませて。風が、吹きぬけてゆく。わたしの、ささやかな熱量を。感知する、黄金のペーブメント。しかし、ここから先に道はない。くりかえし、くりかえし。蝸牛の、有毛細胞を震わす。断崖上の、アリア。



今日も、ふつうに暮らして。ふつうに、滅びてゆく途中。って、そのまま、詩になりそうなので。そうする。導師よ。夢と希望に逃避して。現在に対峙しないのは。グシャであるか。だとすれば、この世はかなり。愚者愚者である。



あのころもいまも。わたしは詩をかいている。が。トシをとるにしたがって、詩にすがることが少なくなった。詩をかくことが、生きるための理由。という思い込みも、もはや私にはない。詩がなくても生きていける。が。それでも、やはり私は。詩をかくだろう。死ぬまで。



花が咲いたので摘んだ。悲しくなったけど泣けないから。ひびわれた塔をのぼって。素手で。青銅の鐘をたたいた。皮膚がやぶれ血が出た。骨も。するとついに。鐘は。わたしのかわりに。大声で。泣きはじめ。あけがた。大量の雨を降らせて。割れた。



詩をかくことが第一義的ではない。詩をかく私は、私の全体の一部にすぎない。そんなことは、当たり前だ。だから歴史上の、いわゆる詩人たちは、みずからかいた詩のせいで、その人生を歪曲されて伝えられている。と。いうことも当然あるだろう。



あと少し。あと、ひとこと。あと、舌の長さほどの。ことば。が。足りないくらいが、ちょうどよい。比喩と影の、宇宙の谷間に。まどろんで。内なる、血小板が。もっとも減少する、陽だまりで。きみに告る。



戦争。人は争って、自分の正義を主張する。勝っても負けても、わたしが。いっぱい、死ぬ。悲劇なのか。ああ。そうだとも、歴史は。悲劇の、ブラックボックスである。だから、気まぐれな風に、裏がえったカードは。喜劇なのだ。笑ってもよい。



そして今日も、私の。あずかりしらない、約束によって。また、いちにちが、終わる。科学者は、それを法則というが。美醜がたんに、相対的なのは。真理の不在を宣言した、哲学者のせいではない。だって、神が死んでも、教会は。「永久に不滅です」。



父は。復活したときに、みずから。墓のまわりを。掃いて、水で清めた。腹がへっていた。もう、弟子の顔も。裏切り者のことも、忘れていた。すがすがしいまでに、自由になった。新しい生活のために、職安に出向いた。ハロー、なんか仕事くれ。



(https://twitter.com/poetarot)
































by puffin99rice | 2014-01-26 07:56