旬の味覚が出没する界隈で
郵便ポストが盗まれた
その時刻
テルテル坊主は自転車にのり
デパートに買い物に出かけていたから
雨がひとしきり降って
逃走経路を濡らした
事件はなんと美しく語りつがれてきたことか

それはいつの話だろう
伝承の水に手を入れたぼくの頭蓋を
ひんやりと
うす茶色の時間が渡っていく
やがてすべてが還るだろう
眠りの甘美な名残のようにあとひいて
はじめの
そしてさらに浄められた欠落へ

誰のものでもない言葉
というものがある
かなしみに透きとおるほど純潔だったころの
むかしむかしの
霧の都や
北風のうしろの国や
溶ける魚や
わが夢の女など
異語の封印をもどかしく解く手に
確信犯のはなやぎ
というものがある






初出  現代詩フォーラム(2004年3月24日)
by puffin99rice | 2015-02-26 22:13