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スーパーカブ短歌控え(100首)

誰だつて日を浴びながら野に寝るとみな赦されて草花になる

褒められたいとか選ばれたいとか思ひもせず咲いているんだねよ

野にみちてふりそそぐひかりにおのずから祈りのかたちにひらく

乾杯とひとり宙にさかづきを上げれば遠い来しかた浮かぶ

どこまでも河川に沿ふてのぼり見る雲のちかくに水のふるさと

ほんとうは郷里の土に死すべきを奇なる縁ありムサシノNOW 

このいまの言の葉だけが濡れている生鮮食品のごとくに

若者がまたあららかに継いでゆくそのギャップもわれ愛すなり

まだ誰も通らない道突つ切つて風のまなかへ消失したい

オートバイ地を蹴るごとく始動して花へ神へとわたしを運べ

曼珠沙華われ超然とここに死すめんどうなので他人(ひと)に会わない

空へとつづく見えない道があるのかも欲しいのは大きなつばさ

この道をひたすら行けば断崖のまぎわでとび立つ鳥になる

肺胞に風みちるまで走つたらユーターンして帰ることです

二足歩行も二輪車も転倒するたびうまくなると言ふらん

いまここでコケたらただではすまない旅のおわりの金木犀よ

たそがれに冥王星の気配ありその方向を指さしてみる

最終の駅に降りるやいなや全員ひとしく変わる日付

何を書いても詩になると思ふていた若い日だけの権利として

思ほえず微笑みこぼる神さまの每日くばる朝のひかりに

仲秋のムーンロードをひたはしり峠の茶屋でだんごを食ふた

月にいるのはうさぎではありません月にいるのはあれは砂ぼこり

秋晴れやうつかりノーヘルで出かけなに食わぬ顔で帰還した

まだ行かぬ地図の上なる街はしる夢はゆたかな体験ならむ

忘れるなねむりとうつつどちらでも感じていればリアルと同じ

いつだつて夢のなかでも死ねるから遠くに墓をあえて持たざる

あなたへの言葉ひとつに血を流し血を流しつつわたしはわたし

囁きはあなたの耳にふさわしくわたしの口の大きさ以内

あるがままなるようにしかならないと無心でわたる風の陸橋

ニヒリズム風にとばしてひるがえる旗の真上を飛行機のゆく

青空をいつちよくせんにまつぷたつ亀裂のごときジェット機雲

ふるさとの海へとつづく傾きを思ひだしつつ湖畔にくだる

ふるさとはいくつもあるが海のないここがわたしの終のふるさと

はかなくも生かされている人の身をまといてすでに六十余年

あといくつ寝ると死ぬのか束の間をすべての本は読まれたりせず

釣り人はひとりにひとつ舟うかべ水面(みなも)にうつる鳥をみていた

おどろきもときめきもなく見る銀翼の重量物の空飛ぶを

いまよりか三十年若くてもいまと変わらずぐうたら過ごす

去るものは追わず来るものは拒まず敵も味方も縁(えにし)であれば

今日こそは知らない山の雲われて光さしいるところまで行く

たえまなく空の光のくだけ散りかけら無数にふりそそぎいる

いずれこのからだも消えるみずからの肩をいだいて泣いた夜さえ

いままさにここに我ありデカルトの人間機械論もよきかな

物質なら無にかえるだけたましいも神も仏もあの世もなく

刻々といまここにしか我なし過去も未来も同じ風のなか

生きとし生けるものへ乾杯とそのまま書いても歌になればいいね

みはるかす野のひろがりの向こうにも野はひろごりてはてなくつづく

旅のはてまなこ閉じれば遠い日の三叉路に立ち迷うわれ見ゆ

いつだつて時間のへりに立つている踏みだす明日は誰も知らない

とめどなく逝くひとのむれ青空をのぼりて雲のかなたに消えし

いつからか異端なるわれ酷薄なまなざしゆえに人の眼を見ず

酷薄なまなざし持つは我でありひとのこころを見透かすようで 

自意識の過剰とひとは言ふなむそうかも知れぬそうでないかも 

ハロウィン何をいまさら仮装とはひとはふつうに仮面をかぶる 

もはやどこにも行かない何かをめざすこともないと嘯いてみる

ここでよい発語のはての風景のうつろうままにここでよい

いやさここがいいのだ位置確認じゆうぶん断崖のきわだから

空を読み風と光と雲と水聴けども書を捨てられず

借りたものひとつひとつをいとおしみ返してゆく無への道すがら

子どもらが手のプラモデル戦闘機なにもしらずに憧れている 

ひとはみな水と光でつくられた冬のはじめに透けるたましい

切なくてめざめのきわに手をのばすその指のさき立ち去るあなた

かくのごと祝福されてきたゆえに世界を祝福しかえす

この場所にたまたまふつと死ににきた誰もわたしにやさしくするな

見わたせば花も紅葉もうつくしき武蔵野ゆかば涙こぼるる

少しずつ滅ぶ肉体(からだ)をもてあまし花の言葉に耳すましゐる

瞑すればもの言わぬものの饒舌が風に運ばれてくる

目覚ましへのばした妻の手の甲にかさねるわれの手のひら熱き

誰にでも心に神はおはしますひとりひとりにただひとはしら

けふもぎりぎり境界で晩メシにありつけました感謝します

世界を「救う」は「滅ぼす」と同じちからが必要なんだヒーロー!

そしてまた筋書きのごと落日のくりかえしては滅びるわたし

鳥たちの行き来する空にまで国境あるを悼みいぶかしむ

神さまは有名無名考慮せず人はただ生き死ぬるなりけり

青い朝晴れた空にも絶え間なく死にゆくひとの列はつづいて

足もとの道なき道いそぐ蟻の行方見とどけ芝生に至る

あこがれにあこがれてゆく青春の海には遠いまして空には

汚れなきたましいは死す潔癖もおそらくは死す襤褸をまとえ

いつたんは仮死の持続をくぐりぬけ自我の卑小を愛すともがら

寒い夜の心の襞の迷宮を返歌もとめてさまよい歩く

冬浅く死んではじめて名を知つた受賞作家のニュースを聞けり

またひとり父の世代の作家逝く庭の日陰に紅葉を植える

わたくしも生身ですので腐ります賞味期限が迫つています

神さまは誰のものでもないゆえに悲劇喜劇の不可避の坩堝

自堕落に今日も過ごせリ酒飲みて為すべきことも忘れはてたり(笑)

しょせん他人(ひと)の痛みなどわからないからせめて真横にそつと立つ

死に至る生活習慣病というのは人生のことだし

生まれきて絶望しない人間はないとキェルケゴールも語りき

信徒だけ救われるって変でしょ神は誰のものでもないのに

実を言ふと神は誰も救わない人はみずから立ち上がるのみ

青空の瑕(きず)うつすほど磨き上げ雲のはたてにいざ旅立たん

娘から実家と呼ばれる習わしを慣れずにこころ惑いけり

もし仮に孫ができても絶対におじいちゃんとは呼ばせないぜ

じじいを名のつたらほんとうに身も心もじじいになつてしまうさ

日本ではケーキをたべるイベントを降誕祭と言い習わされ

くつしたに入らぬものを欲しがつて星に祈つた幼少期

新春をことほぐために欠けているブルーとマゼンダ買いに行く

このいちねんをふりかえるどころかじんせいをおもいかえす年の瀬

さようならあつたかもしれないわたしなかつたかもしれないわたしたち

by puffin99rice | 2015-12-06 20:57