そばに、来ないでくれ。声が聞こえると、不安になる。風に、ただよってくる。匂いが、罠のように。いちばん、大事なところに。まとわりつく。昨日までの、確固とした。自分は、どこへ消えたのか。いまなら。きみは、ぼくを。言葉だけで、殺せる。



でも。ほんとうは、知りたかった。いきなり。秘密に、さわりたかった。嵐のなかで、踊りたかった。狂いたかった、歌、うたいたかった。まじりあいたかった、身も心も。熱病のように。朝も、昼も、黄昏にも。うなされて。死んでもよかった。



ひとがみな。逆位置で、語るから。いつも吊られていた。こんなもんさと、あきらめて。長いこと、その姿勢で。見ていた、世界に。あるとき。とつぜん、きみが。おちてきた。そして、ぼくの。目の高さに、正しく。立ってみせた。



もっとも繊細な季節に。どうして。自分が好きなことは、相手も。とうぜん、そうにちがいないと。ぼくは、思いこんだのだろう。きみは、いつも。二度とない様式で、顕現するから。いくら経験を積んでも、役に立たない。



ちぶさ。たなごころで、はかる。その充溢。ほんらい房とは、枝から垂れ下がるものをいう。果実。ぼくの、初めての。夜さえ、養分にして。きみは夏の。積乱雲みたいに、躍動していた。



世界が。リセットされて、あらたに。はじまるとしたら、また。そばにいたい、いや。いっそのこと、犬になりたい、そしてみじかい生涯を、野望もなく。きみの、足、ひたすら。舐めて、過ごしたい。まいにち、足蹴にされても。

※ 

あの雲、ひかる帆船のように。空の縁へ、すべってゆく。ぼくは、乗り遅れた。のかもしれない。むかしの約束をひとつ、受け取りに行く。時刻だったのに。



それで、思いだしたよ。今日の約束を。きみが。世界の掟を、破棄して。姿を消したとき、ぼくは。橋をかけるのをやめた。星と星とのあいだを。ただただ、風のように。吹いてゆけ、レクイエム。



おんなの背中が、陶器のように。割れた、あれは。よく晴れた日の、海辺の事件。以来、誰とも手をむすばない。だってぼくの手は、きみとの。結び目になったまま。ほどけない謎のように、いつまでも。新鮮な。血を、握りしめているから。



雲のなか、を。きみをさがす、ぼ、くがいる。き、みが、いたから。ぼくは、いまに。現存して、とめどなく。泣いている。ふたりで、世界を。滅ぼしたかったね。言葉なんか、いらなかったよ。異端審問の、朝の鏡に。拒絶の、てのひら。突き出して、映す。きずあと。



貝殻を、ひろいながら、砂浜の。はてまで行って、かけもどってくる。きみのイメージが。なんども、なんども。くりかえされる。永遠の。夏の背中を、追いかける、素足で。なんども、なんども。転倒する、そのたびに、ぼくは。熱い、砂をのんで激越に。叫ぶ。



断崖の。突端に立って、とつぜん。きみが、ふりむいた。海をふりきって。何を見ようと、したのか。遠くをとぶ鳥の影。退屈な喧騒が。待っている都市の輪郭。ぼくは。まだ若い言葉を、ふりしぼって。憂鬱な、きみの横顔が。うつくしく好きだと告白した。



導かれて。摩耗する、たましいの、嗚咽のような。歌に。いっきに、百年を跳躍して。いっしゅん、その手を。捕まえたのに逆にひきこまれ。渦に、巻きこまれ。空は、回転する、歯車でいっぱいの。平行世界。で。ふたたび、ぼくはきみを。見うしなう。



いっしょにランチしたり、ショッピングしたり。そんな。お、ままごとではない。夏の硝煙のなか。廃墟の街角で、おとこの子おんなの子、抱き合って死ぬ。届かないよ。ぼくが無傷で。遠いところから、きみに出す。手紙なんか。




きみのしっぽ(霊体の)が、最後に確認された。多機能遊園地の、非常口のあたりには。謎を解く手がかりが。いっさいなかった。ぼくは叙述の平面から、逸脱し。四次元スパイラルを、ネガティブにぬけて。夜の場末の、カラオケのない。スナックに、復元する。



先を急ぐ、きみ。それが使命であるかのように。ただひとすじの光にすがって。ぼくも、あやうい。自分をはぐくんだ地を、すてて飛び立ち。あとで気がつくのだろう。その代償の大きさに。



きみは眠るな。眠らなければ。夜はこない。ぼくは海を見ない。見なければ。座礁しない。星々のきしみあう音に。耳をふさげ。何も聞かなければ。傷つかない。口もきかなければ。誰も傷つけない。夢もみずに。知らないうちに。死ねる。



その、きみの。毒薬のように。効能たしかな、言葉の。痕跡を追って。ぼくは、変幻をくりかえす。眠っている者たちを組織せよ。きみは、ことあるごとに。そう叫び。バカ高いチケットを、ひとたばひゃくたば。ぼくに渡す。さばけないので、ぜんがく身銭を切る。



人形よりも、生身がよい。二次元も捨てがたいが。九次元冥界の女も好きだ。輪廻の分類にしたがえば。ぼくは、くもまく科しゅっけつ目で。植物になるそうだ。そんな、きみの。笑えない上段のかまえも。大好きだ。



あのねあのね・・・・・・それからそれから・・・・・・(以下省略)と書いて、まだつづく。いったい、ぼくの。どこからどこまでが。詩なのか。嘘なのか。リアルなのか。野菜なのか鉱物なのか。いっぺん、切って。見たい。きみの血を。



ぼくらは。それと知らずに、何度も。すれちがって、いたのかも。運河のある街や、海のない避暑地や。都会の大渋滞のなかでさえ。きみは自分のことばかり。そして、結局。ぼくも自分のことばかり。見ていた。だけ、なのかもしれない。



そして、結末も。教訓もなく。唐突に。この世が終わる。廃船を、砂丘に。積んで、燃やそう。きみは、変わらず。読み解けない。象徴のように、炎となり。水となり、風となって。星から星を。無限に、巡りつづける。ぼくの死後も。




(https://twitter.com/poetarot)
by puffin99rice | 2016-06-01 00:19