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そろもん

またひと日ほろびにちかくめざめては喫水線を見きわめている



明けがたにまどろみ浮かぶ面影の昔の女にまた恋をする 


手を握りにぎりかえしてぎこちなく眼も合わさずに花火見ていた



遠くまで行けるだろうか眼前の道に生涯をついやせば


遠くまで行くことはない近場にて土を工夫し花を咲かせる


遠くまで行けそうな気がしたけれど何も見ないで通過しただけ 


遠くまで行こうとするな幻想にだまされていると思うのなら


遠くまで行けばよいのだまた幻想にあざむかれているとしても


遠くまで来たりしものぞ真夜中にみずからことほぐ誕生日




夜がきてわたしを裁くありがとうまだ少しだけど猶予がある


寝静まり耳を澄ませば星々のささめきごとのさなかにいたり


夢のなか錯乱と咲く花の名をめざめて百科辞典でひく 


かいもなく夢の荒野をさまよいて百年の石の種をまく 


まぼろしをまぼろしのまま愛撫するその切なさになみだひとすじ 



ますぐなる氷柱のごとく目にみえて冬のひなたに光あつまる


おやみなく溢れくるから手をひろげ光のなかにただ立ちつくす


けふひとつ歌つくろうと陽だまりのひかりの底を踏みぬいてみる



からだの表面積をひろげたステゴサウルスの夢にねむる


ペンギンは平凡に暮らしていただけ累々と餓死の行列


かりそめの星の谷間に寝起きする人体模型かなしからずや



ふりあげたこぶしの花が咲くからに指をひらいて手をさしのべる 


ぎんなん鈴なりして降るふる秋のはてひとりゆく男の背中


ハロウィン何をいまさら仮装とはひとはふつうに仮面をかぶる


目に見えぬ男の涙つつしんで頂戴します血潮のなかに 



またひとり名を知る者の逝く記事にわが身の明日をかさねる吐息


用もなく口ひらいてもその形ことばとなつて世にのこされる


成すもなさざるもひとしく沿うてゆく生老病死の順路


老体のメンテナンスに通う日われに来ようとは思はざりしを


晩年のかがやきあるとするならばいまがそのときなどと戯けて 



未来だけ見て現在を軽んじる夢の仕様を修復中 


歌は歌リアルとちがうものだから身をひきしめて暮らしを立てる



夕焼けの空がくずれて真実のありかをそと垣間見せている 


歌うならいますぐ歌えたちまちに消えるたましい言霊だから


これかぎり見知らぬ道に手向けする鎮魂の風のモニュメント


この道を帰る者なしひたすらに進み行けども誰とも会わず


こころして孤独であれと道端の名もない草に檄文結ぶ


いまならば煙のようにただよいて広がる空の雲と消えても 


空漠とひろがるもののふところで生身のいまをたしかめていた 



つつがなくほろびゆくのかこの人も握りかえした指の冷たさ 


とめどなく逝くひとのむれ青空をのぼりて雲のかなたに消えし


祖父や父の死ぬさまを息子に伝えた俺のときはお前の番


世界はそんなに単純ではないのさ死ぬのは早いバカやろう



弁当をひろげるときはどこであれ心はいつも遠足気分 


晩酌はラジオ講座を聴きながら秋の夜をひとりしづかに私有するとき


にんじんじゃがいもたまねぎ肉煮こみ心のあくをすくつてゆく


わが歌を採点するな添削はとんでもないとうそぶいている


日がしずみ内省せまる時刻には酒かっくらって逃亡しろ



どこからか来てどこにも行かないまま生涯をとじる夕餉かな


ついに手に何ものも得ずかんぱいとせめて小さき杯もちて


かぎりある命のいまのことぶきをなおことほぎて夕餉を終える









# by puffin99rice | 2017-01-15 08:15